軽くて強く錆びにくいなど数々の特性を持つアルミニウムは、高いバリア性と遮光性や意匠性などから、化粧品などさまざまなパッケージ材料として使われてきた。しかし反面、アルミニウムは製造時の高い電力消費と高いCO2排出量からライフサイクルアセスメント(LCA)の観点で環境負荷の大きい素材と見なされ、近年は脱アルミ化の重要性が取りざたされ、アルミの代替素材への期待も高まってきている。
こうした背景のもと、山本通産主催、メルクパフォーマンスマテリアルズ、コニカミノルタジャパン共催の「3社合同オンラインセミナー“パール顔料を知ろう!Vol.2”~基本知識とその色彩計測、トレンドを踏まえたカラーデザインについて~」が、1月19日13時30分~15時55分に開催される(開催形式:Microsoft Teams、費用:無料、申し込みURL:http://forms.office.com/r/E2SnnVkXL5)。
同セミナーでは、3社から、脱アルミ化と樹脂パッケージの高意匠性を実現するパール顔料の特長や優位性、測色計によるパール顔料を使った高意匠性新素材の測色評価、先行トレンドをもとにパール顔料を用いたカラーデザインなどについて紹介がなされる。
ここではセミナー開催に先立ち、脱アルミ化と高いメタリック意匠を両立するパール顔料や、トレンドを踏まえたカラーデザイン、さまざまな高意匠性材料の測色技術などに関心を持つ層に向けて、同セミナー参加にあたっての各講演のポイントを簡単に紹介する。
メルクパフォーマンスマテリアルズ:パール顔料を用いたメタリック意匠
メルクパフォーマンスマテリアルズ(以下、メルク)は1960年代に、天然雲母に金属酸化物をコーティングすることで無毒性のパール顔料を世界で初めて開発した。
2000年代に入って合成雲母基材やシリカ基材、ガラス基材などに金属酸化物を被覆することで、高輝度・高彩度なパール効果を実現。この真珠のような光沢や輝きを演出するメルクのパール顔料はさまざまなものに色彩効果(エフェクト)を付与するパール調エフェクト顔料と呼ばれ、自動車ボディーなどでは塗料に添加することでパール調を再現し、樹脂では練り込むことで高級感を演出、印刷分野ではインクに混ぜたりすることでデザイン性を向上するほか、化粧品分野ではファンデーションなどに添加することでより魅力的な演出がなされている。
パール調エフェクト顔料の構造としては低屈折率の各種基材層に高屈折率の金属酸化物を被覆した構造で、金属酸化物層の厚さが十分に薄い場合に反射光が干渉。金属酸化物層の厚さが反射する干渉色を決定する(図1)。
同社 東 和久氏による講演1「パール顔料を用いたメタリック意匠のご紹介」では、パール調エフェクト顔料における金属酸化物層の厚さと意匠性の関係や、基材別の顔料の種類と特徴について紹介するほか、アルミのリサイクル性の悪さや内容物の異物探知の難しさ、製造時の電力消費量の高さなどに対する包装容器での脱アルミ化のソリューションとして、高い安全性・省エネ・コスト削減・高付加価値化が可能なパール調エフェクト顔料による、アルミフリーのサステナブルなメタリック調加飾を提案する。
オキシ塩化ビスマス結晶(図2はオキシ塩化ビスマス結晶の拡大写真)の高いアスペクト比と粒子径により滑らかな光沢をもった仕上がりを実現するパール顔料Biflairによる軟包材への印刷による加飾を紹介(図3)。
また、光がより反射される粒度の揃った平滑な板状粒子であるアルミナをベースにすることで際立った高彩度を実現するパール顔料Xirallic(図4)による樹脂成形品へのメタリック調加飾の事例では、真空蒸着による加飾とのコスト比較も紹介する(表1)。
詳細については1月19日13時35分~14時15分の東氏による講演を聴講いただきたい。
コニカミノルタジャパン:新素材の測色評価
同社 北澤久和氏による講演2「様々な素材の反射メカニズムと“高意匠性”新素材の測色」では、色計測の仕組みとして一般的な試料と金属調試料の反射メカニズムの違いや、分光測色計※の照明受光光学系(単方向照明方式と拡散照明(積分球)方式)について解説した上で、ソリッド/メタリック/パール塗装、金属・メッキといった多様な材料(図5)の反射メカニズムの違いについて紹介する。
さらに、メルクのアルミ上に印刷した食品包材のパール顔料への代替えであるアルミフリー・メタリック意匠顔料Biflairと化粧品容器用のプラスチック成形品におけるアルミ蒸着の代替えであるXirallicを対象に、アルミのメタリック意匠とパール顔料のメタリック意匠の違いを、「色」と「光沢」が測定できる分光測色計CM-26dG(図6左)と「色」を「多角度」で測定できる分光測色計CM-M6(図6右)を用いて測定評価した事例を紹介する。
アルミ上への印刷物とBiflair使用品は見る角度によって色が違って見える(図7)。「印刷物は、ハイライトとシェードでは傾向が異なるので、その意匠性、色の差を数値で表現したい」というメルクからの要望を多角度で色測定可能なCM-M6で評価を行った。そして、特徴のあるさまざまな測色評価結果から、Biflair使用品やXirallic使用品の意匠性の高さを示す
ことができた。
※分光測色計:分光測色計より発光した光を物体表面に照射し、その反射光を分光測色計内に取り込む。取り込まれた反射光は回折格子等で分光され、複数のセンサーで受光することにより各波長での分光反射率(光の量)を得ることができる。そして、得られた分光反射率より色空間の一つであるL*a*b*(エルスター・エースター・ビースター)表色系を算出し色の定量化(数値化)を行うことができる。講演後半での実測結果は、このようにして得られた分光反射率やL*a*b*、そして光沢値を用いて新素材の数値的紹介をする。
詳細については1月19日14時20分~15時00分の北澤氏による講演を聴講いただきたい。
山本通産:先行デザインをもとにパール顔料を用いたカラーデザイン
山本通産では、幅広い情報源とネットワークから情報収集し、一歩先の色のトレンドとニーズを分析し、色と光の専門商社だからできる確かな情報力と多彩な表現力を駆使して、COLOR(色)とMATERIAL(素材)FINISHING(加工)に、新たな価値を提案している(図8)。同社の色彩創造センターのユニークな点としてカラーラボ(実験室)があり、実際の顔料、塗料等を用いた色づくりを行っていることが挙げられる。
同社 橋本真実氏による講演3「色を楽しみ可能性を広げよう」では、色彩創造センターにおいて実際の色づくりをベースとしていることから、単に色の印象を説明するだけではなく、実感した顔料の特徴を伝える内容としている。
具体的には先行トレンドを踏まえながら実際にパール顔料を触り、塗料としてデザインした色について伝える。色を楽しみ、色の使い方の可能性を知ってもらうことで聴講者の感性を刺激しデザインや発想の種となるような講演とする狙いだ。
今回のセミナーのポイントとしては、以下が挙げられる。
• メルクパフォーマンスマテリアルズ、コニカミノルタジャパンの講演内容とリンクした脱アルミ化が可能なパール顔料Biflairで作成した色について視覚的に比較し(図9参照)、デザイナーとしての言葉で伝える。
• 先行トレンドをもとにパール顔料を用いたカラーデザイン
先行トレンド収集については、さまざまな媒体から多様な視点で先行トレンド情報の収集を行い、それらを総合し解釈を行っている。
色のデザインについて、参考として2022年分を図10に掲載するが、「変化する自然の色」をテーマとした。日差しを浴び、輝く緑の草原。風に吹かれ印象は一秒後には全く違うものとなる。ふわふわとした草の質感、光や風で変化する草原。優しく背中を押され、包み込まれるイメージである。
今回の講演では、2024年後半から2025年の先行トレンドをもとにパール顔料を用いて作成した色見本を提示する予定となっている。
詳細については1月19日15時10分~15時50分の橋本氏による講演を聴講いただきたい。
一目見て美しいと感じられる発色は、顧客の購買意欲をかき立てる商品の大きな魅力となる。鮮やかさ、輝き、発色性、質感、高級感を作り出す色材はメーカーにおけるものづくりを強力にサポートする。顧客の高い要求を満たすためには、顔料の選定からカラーデザイン、色彩の計測はブランド力向上の決め手となる。
1月19日13時30分~15時55分に開催される「3社合同オンラインセミナー“パール顔料を知ろう!Vol.2”~基本知識とその色彩計測、トレンドを踏まえたカラーデザインについて~」では上述のとおり、パール顔料のリーディングカンパニーであるメルクパフォーマンスマテリアルズからパール顔料を用いたメタリック意匠の紹介が、測色機器のトップメーカーであるコニカミノルタジャパンからパール顔料の測色評価に適した測定方法の紹介が、色と光を専門とするトップ商社である山本通産から先行トレンドを踏まえてパール顔料を使用したカラーデザインの提案が、それぞれなされる。
パール顔料の特長やカラーデザインをフルに生かしたブランド力の高い商品の開発およびマーケティング活動、ひいてはさらなるビジネス拡張につなげられるよう、本セミナーにぜひとも参加をいただきたい。