キリンなど、細胞内へ移行する無毒性高分子粒子の合成法を開発

2018年05月30日(水曜日)

 キリンの基盤技術研究所は、東京大学大学院薬学系研究科、東北大学大学院薬学研究科、奈良先端科学技術大学院大学との共同研究で、混ぜるだけで細胞内に移行し、その後も細胞分裂や細胞の分化を阻害することのない極めて低毒性の高分子粒子の合成法を開発した。今回開発した高分子粒子の合成法は、新しい重合開始剤の設計・開発により実現したもので、今後さまざまな高分子の合成にも活用できる可能性があり、医療や創薬などを含めた幅広い分野での活用が期待されるという。

 一般的に、高分子が細胞内に移行するには、その高分子表面がプラス電荷で覆われていることが有効とされている。さらに、水溶性の重合開始剤を使って合成した高分子粒子の多くは、表面構造が重合開始剤の性質を反映することも明らかになっている。今回の研究では、この二つの知見から、プラス電荷の部位を持った重合開始剤により、プラス電荷の部位で覆われた高分子粒子ができるのではないかと考えた。これまでプラス電荷の部位を持つ安定的な重合開始剤の報告はなく、今回、初めてプラス電荷の部位を持った重合開始剤の開発、その重合開始剤を使って表面がプラス電荷の高分子粒子の合成に成功した。

 この技術を利用して合成した蛍光ナノゲルプローブは、混ぜるだけで細胞に取り込まれ、細胞分裂や細胞の分化を阻害しない極めて毒性の低い高分子粒子であることから、これまで困難であった長期的で、かつ細胞の分化を伴うような高度な培養などにも活用できる可能性がある。