東京大学先端科学技術研究センター高機能材料分野の田中肇シニアプログラムアドバイザー(特任研究員/東京大学名誉教授)、ワン インチャオ特任研究員と舘野道雄特任助教(研究当時)の研究グループは、等方的な相互作用を持つガラス形成物質とコロイドゲルについて、数値シミュレーションを用い、非晶質固体であるガラスとゲルについて、その力学特性の温度、経過時間依存性について詳細な研究を行い、その背後にある物理的メカニズムを解明した。
この研究で明らかにされた系のポテンシャルエネルギーを減少に導く有効な戦略を、リンゴの収穫に例えて示すと、リンゴの数は粒子間接触(隣接粒子間相互作用)の数、大きさは、接触ごとのポテンシャルエネルギーを表す。ガラスの場合は、リンゴのサイズを増やす(接触ポテンシャルエネルギーを減少させる)一方で、リンゴの数(接触数)は一定に保たれる。一方、ゲルの場合は、個々のリンゴのサイズが平均的に多少減少しても(接触ポテンシャルエネルギーが増えても)、りんごの数を増やす(粒子間接触の数を増やす)ことが優先される。さらに下図では、ガラス(左)とゲル(右)の弾性に対する静的構造とダイナミクスの影響についても模式的に示されている。