ダイセル・エボニックは11月30日、「メンブレン事業のバーチャル記者説明会」を開催した。当日は、独エボニック社のファイバー、フォームおよびメンブレン事業の責任者であるヨルダネス サボポウロス氏、ダイセル・エボニック社長の金井 産氏および同社メンブレン事業担当マネージャーの須川浩充氏の出席のもと、同社マーケティングコミュニケーションズ マネージャーの西 直子氏の司会進行により、以下のとおり進められた。
まず、動画を用いてエボニック社のメンブレン、フォーム事業の概要について紹介した後、サボポウロス氏が「高効率分離を実現したエボニックのメンブレン」と題して、メンブレン事業に焦点を当てたエボニック社の戦略といくつかのハイライト、メンブレン事業のグローバルでの展開、さらには日本での提案・展開などについて説明した。
エボニック社はスペシャルティアディティブ、ニュートリション&ケア、スマートマテリアルズ、パフォーマンスマテリアルズの4部門からなり、同氏の統括するパフォーマンスマテリアルズ部門は、食品新素材、アディティブ・マニュファクチャリング、持続可能なニュートリション、化粧品ソリューション、メンブレン(膜)、ヘルスケアソリューションという六つの成長分野でビジネスを進めている。
成長分野の一つであるメンブレン(膜分離)の技術は、高分子膜への溶解性・拡散性機構によって特徴づけられることを解説。
エボニックのメンブレン製品ポートフォリオとしては、すべてのキーとなるガス分離膜をターゲットとしており、2011 年に初めてバイオガスを効率的に精製する「SEPURAN® Green」を販売開始して以来、ヘリウム回収用の「SEPURAN® Noble」、窒素回収用の「SEPURAN® N2」、有機溶媒(OSN)ナノろ過用の「PuraMem® OSN」、天然ガス精製用の「SEPURAN® NG」、水素回収用の「SEPURAN® Noble」と継続的に拡充。本年9月にはさらに、揮発性有機化合物(VOC)を分離する膜技術を開発し、「PuraMem® VOC」として上市している。同社のメンブレン(膜)は現在、世界中で500 以上のシステム設備で使用されており、革新的で競争力ある製品の鍵は、ケミカルカンパニーとしての川上~川下までの一貫生産体制にあることを強調した。
今回は、平膜ベースのスパイラル膜モジュールPuraMem®製品ファミリーとしてOSN膜と新開発のVOC膜を。OSN膜の使用用途とは医薬品/スペシャリティケミカル、天然油&抽出成分、バルクの化学製品、石油&石油化学などがあるが、医薬品では例えば熱をかけずに医薬品有効成分を濃縮・生成できるメリットを挙げた。VOC膜の主用途としては、オイル&ガス、貯蔵用、プロセス産業があり、VOC膜によるガソリンタンク中の揮発性ガス回収の事例では、環境に有害な蒸気の排出を削減しクリーンなガスのみ大気放出できる、ガソリンが濃縮されたガスは凝縮されて液化して元のタンクに戻せる、といった利点を挙げた。
また、中空糸ベースの膜モジュールSEPURAN®製品ファミリーとしてGreen膜とNoble膜を紹介。Green 膜はバイオガスを精製し、再生可能な原材料から持続可能な天然ガスへとつなぐことが可能で、Green膜はすべてのリソース由来のバイオガス精製で実績があり、精製されたバイオメタンは多くの用途に利用可能とした。Noble膜はエレクトロニクス、光ファイバー、リーク検知用、リフティング&バルーン(飛行船等)といったヘリウムを使用するエンドユーザーの効率的なヘリウム回収のソリューションとなっているが、アンモニア分解やメタン化プロセス、ガス導管への水素注入といった、グリーンな水素を作る新しいプロセスにおいても有効なソリューションとなるとした。日本における水素ステーションへの提案として、Noble膜が導管からの都市ガスと水素の分離が可能なことから、水蒸気改質の代替としてガス導管への水素注入が実現できるとした。さらに、Noble 膜が分離技術と導管注入において重要な役割を担うことによる、オーストラリアから日本へのグリーン水素サプライチェーンの可能性を示唆した。
エボニックは2011年の分離膜製品の投入から10年で膜技術の重要なグローバルプレーヤーとなっているが、引き続き、ガス分離、蒸気分離、有機溶媒ナノろ過における分離膜のリーディングサプライヤーを目指す、と総括した。
説明会終了後は、エボニック社およびダイセル・エボニックの出席者と参加した記者による質疑応答が活発に行われた。