ポリプラスチックス、ADAS部品向けエンプラ製品・技術を公開

2020年07月14日(火曜日)

 ポリプラスチックスはこのほど、 ADAS(先進運転支援システム)部品向け材料・技術として、アクチュエータ部品・通信機器向けの同社ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂「ジュラネックス ®PBT」の技術と適用例の一部を公開した。

エンプラ・スーパーエンプラが適用される自動運転関連部品
エンプラ・スーパーエンプラが適用される自動運転関連部品

 

 自動車業界では100年に一度の大変革と言われる大きな変化を迎えており、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)が重要キーワードとなっている。なかでもAutonomous(自動運転)の実現に向けて、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems;先進運転支援システム)の部品が増加している。また、ADASの高度化に伴い、各部品の送受信するデータ量が増加するため、高速通信が必要となっている。こうした市場の要求に対応すべく、ポリプラスチックスではこのほど、アクチュエータ部品、通信機器向けの同社PBT樹脂「ジュラネックス®PBT」を紹介した。

 ADAS部品は、周辺を監視するセンサー、動作するアクチュエータ、車-車間またはインフラとの通信機器、判断するECU(Electronic Control Unit)で構成されており、増加傾向にある。それとともに5G通信の普及で、高速伝送部品、高周波伝送部品も増加することが予想されている。 自動車の運転は、運転者が「視認・判断・操作」をしているが、ADASではこれらの動作の一部を各部品が行う。例えば、視認:センサー、判断:ECU、操作:アクチュエータとなる。

◆アクチュエータ部品向けの材料

 近年、自動車のアクチュエータ部品は電動化されてきており、By wire systemの採用が進んでいる。従来のBy wire systemはエンジンの吸気量を調整するスロットルだけだったが、最近では変速機のシフト、パーキングブレーキ、ステアリングやブレーキにもBy wire systemが広がってきている。

 By wire systemは電気信号でアクチュエータをコントロールするため、絶縁素材(樹脂)が必要になる。またADASが高度化していくと、部分的に制御が自動化されるため、関連製品には高い作動信頼性が要求されるようになる。そのため、電源・信号の回路を2系統にするなど、冗長性を考慮した設計が進められている。このような変化に伴い、アクチュエータ部品は厳しい環境下に設置されても、故障しない高い信頼性が求められるようになっており、これらの部品に使用される樹脂も同様に、高い信頼性(長寿命)が求められる。

 同社のジュラネックス® PBTは、自動車の厳しい環境下でも性能を維持することから多くの電動アクチュエータ部品に採用されている。その一つに、被水環境下でも優れた耐久性を有するジュラネックス® PBTグレードがある。

 車両下部に設置される部品は、路面と部品の距離が近く、路面上の水や融雪剤、油などに曝される。またエンジンやモータ等の熱を発する部品の近くでもあるため、高温にもなる。これらの環境から、多くのアクチュエータ部品には耐熱性が高く、耐薬品性に優れ、吸水による特性変化が少ないPBTが選定されている。

 ジュラネックス 330HR、531HS、532ARはこのような環境下でも耐える優れた耐久性(耐加水分解特性)を有した材料。531HS、532ARは耐ヒートショック性を有しており、冗長設計によるインサート金属の増加にも対応可能なグレードとなっている。

 車両下部の環境下では高温で水・融雪剤に触れるため、金属部品に錆が生じやすい。鉄は腐食して錆びるだけでなく、錆が発生する際に生じるアルカリ物質が発生する。このアルカリ物質が樹脂部品と接触し、樹脂にひび割れ(ストレスクラッキング)を発生させることがある。このストレスクラッキング発生を防止するためには、①耐アルカリ性を有する樹脂を用いるか、②金属に腐食防止対策を施すかの、いずれかの対策が必要となる。532ARはアルカリ物質に対しての耐性を有しており、金属の錆汁が樹脂部に接触してもストレスクラッキングが発生しにくいグレードであるため、車両下部に設置される部品への適用に適している。

ジュラネックス® PBTのグレード特性
ジュラネックス® PBTのグレード特性

 

ジュラネックス® PBT 耐ヒートショック性(-40℃⇔140℃/サイクル)
ジュラネックス® PBT 耐ヒートショック性(-40℃⇔140℃/サイクル)

 

ジュラネックス® PBT 耐アルカリストレスクラックッキングの評価結果
ジュラネックス® PBT 耐アルカリストレスクラックッキングの評価結果

 

◆通信機器向けの材料

 車両の電動化に伴い、樹脂に難燃性が求められるケースが年々増えてきている。高電圧がかかるモータ、電池、充電部品に用いられる樹脂には難燃性を有する樹脂が多く用いられており、それ以外にも近年はV2X(Vehicle to everything)で用いられるデータ通信機器にも難燃性を有する樹脂が用いられている。このV2Xは自動運転(SAE レベル3以上)の実用化に必要な機能であり、今後搭載される車種が増えていくと予想されている。このデータ通信機器のケースやコネクタにエンプラが使用され、これらのエンプラには難燃性以外にも、車載環境下における高い耐久性、高い寸法精度が要求される。

 同社PBT樹脂製品のジュラネックスは難燃材料としての認定(UL規格でV-0)を取得しているグレードを有しており、多くの車載部品に採用されている。特にジュラネックス® PBT 750AMは車載環境下における高い耐久性を有している。さらにケースやコネクタの形状を安定させる機能も付与されており、近年の難燃化が要求される自動車部品への採用が増えてきている。

 自動車で要求される環境温度-40℃~140℃の範囲で一定の機械特性・耐薬品性を持つ材料として、PA66やPBTが様々なケースやコネクタに多く使用されているが、供給の安定性の観点などから、昨今ではPBTの採用例が増えてきている。

 自動車の難燃性要求部品への採用例として紹介するジュラネックス® PBT 750AMは、自動車のエンジンルーム内で多くの実績のある733LDと同等以上の低そり性、耐久性(耐加水分解性)に加え、難燃性を付与している。自動車分野で求められる充分な耐久性および高い形状安定性を有しており、EV、HEV部品、通信機器などに好適な材料となっている。

ジュラネックス® PBT 750AMのそり変形 (箱型成形品の内そり変形を評価)
ジュラネックス® PBT 750AMのそり変形
(箱型成形品の内そり変形を評価)

 

ジュラネックス® PBT 750AMの耐加水分解特性 (プレッシャークッカー試験による引張強さの保持率を評価)
ジュラネックス® PBT 750AMの耐加水分解特性
(プレッシャークッカー試験による引張強さの保持率を評価)