第2回 次世代3Dプリンタ展が開催

2020年03月19日(木曜日)

「第2回 次世代3Dプリンタ展」(主催:リード エグジビション ジャパン)が2月26日~28日、千葉市美浜区の幕張メッセで、「日本ものづくりワールド2020」の構成展の一つとして開催された。同展は、3Dプリンター、積層造形機、3Dプリント材料、3Dプリント受託サービスなど、3Dプリントやアディティブマニュファクチャリング(AM)に関する製品、技術が出展される専門展。

会場のようす
会場のようす


 2018年4月より活動を開始した、やわらか3D共創コンソーシアム(会長:山形大学 古川英光教授)の展示ブースでは、「“モノ”シンギュラリティ―未来の暮らしと3D・4D―」をテーマに、2030年代の未来の暮らしとモノやコト(3Dや4D)の関係性について議論した以下の四つの共創ビジョンを示した。

 「2030年の住空間」では、家が3Dプリンターになり3Dプリンターの中に暮らす究極のDIY生活を描き、関連技術・キーワードとして3Dゲルプリンターやゲルハチ公ロボットなどを紹介した。「2030年の街・社会」では3Dプリンターで生活環境を作る概念から関連技術・キーワードとして食品3Dフードプリンターやゲルクラゲロボットなどを展示した。「2030年代のモビリティ」では、やわらかモビリティとやわらかウェアラブルによって近距離移動が変わる未来を構想、関連技術・キーワードとしてやわらか衣服・シューズ、形状記憶ゲルなどを提示した。「2030年代の医療・食」では体の中に入り弱っているところを修復してくれる、飲む3Dプリンターなど究極のQOLサポート技術を描き、関連技術・キーワードとして食品3Dフードプリンターやプリンタブルセンサーなどを紹介した。

ブースのようす
ブースのようす

 

ブースで配布された“モノ”シンギュラリティ2030共創ビジョンガイドブック(制作:アイケン)
ブースで配布された“モノ”シンギュラリティ2030共創ビジョンガイドブック(制作:アイケン)


 ストラタシス・ジャパンは、0.014mmの微細な積層ピッチで、幅広い材料を取り揃え、薄肉構造や複雑な形状も実現できる3Dプリンティング技術「PolyJetテクノロジー」を紹介した。PolyJet用材料は、透明で柔軟、剛性のある材料で、目的とする最終製品の外観と感触を再現した3Dプリンティング部品の製作に適している。また、専用の3Dプリンターと最終製品グレードの熱可塑性プラスチックを用いて、強靭で耐久性と寸法安定性に優れた、3Dプリンティング技術の中でも最高レベルの精度と再現性を備えた部品を造形できる「FDMテクノロジー」を紹介。特殊な物性が必要となる用途に最適なFDM熱可塑性プラスチックの一例として、優れたESD(帯電防止)特性を付与するABS樹脂「ABSESD7」を展示し、一般のABS樹脂との静電耐性比較のデモンストレーションを行った。さらに、3D CADデータをアップロードするだけで高品質なパーツ造形の見積もり依頼から発注までが簡単に行える「DFP(Digital FactoryPortal)パーツ造形サービス」を提案した。新素材やマルチマテリアルでの造形、大型の造形、実色に近いフルカラーでの造形などコンサルティングを含めて対応している。

PolyJetテクノロジーとDFPパーツ造形サービスの紹介
PolyJetテクノロジーとDFPパーツ造形サービスの紹介


 大塚化学では、チタン酸カリウム繊維「ティスモ(TISMO)」の優れた特性と各種熱可塑性樹脂の特性を巧みに組み合わせた高機能複合材料「ポチコン(POTICON: Potassium Titanate Compound)」の特長を活かしたままで、ポチコンペレットをフィラメント化し熱溶解積層法(FDM)方式の3Dプリンター、さらには微細塗布を可能にする新開発ディスペンサーノズルを用いて造形を行い、優れた造形精度、形状安定性、強度を向上した「ポチコン3Dプリンティングフィラメント」を紹介した。ブースでは、実用的な部品のアプリケーションとして、3Dプリンター用ポチコン材料で3D造形したサイクロイドギヤや高真円度のボールといった3D造形部品を展示したほか、それらを組み込んで製作した自走式ロボットのデモンストレーション走行を行った。ブース内ではまた、上記サイクロイドギヤの製作に用いられた、テクダイヤ製作の3Dプリンティング用の先端内径φ150μmのディスペンサーノズルも披露された。同社製ディスペンサーノズルの特徴である中心ズレのない真円度の高い小径穴あけや、内部に段差のない表面粗さの良好なテーパー形状を適用したことで、精密ギヤの製作を可能にしている。

3Dプリンター用ポチコン材料で3D造形したサイクロイドギヤを搭載した自走式ロボットのデモンストレーション走行
3Dプリンター用ポチコン材料で3D造形したサイクロイドギヤを搭載した自走式ロボットのデモンストレーション走行


 ダウ・東レは、液体積層方式(LAM)を用いて3Dプリンティングが可能な液状シリコーンゴム(LSR)「SILASTIC™3D 3335 LSR」を紹介した。金属や樹脂に比べ柔軟性がある、耐熱・耐寒に非常に優れる、加工性・ハンドリングが良い、といったシリコーンゴムの性能上の利点とLAMの設計および加工上の利点を兼ね備えているため、高速プロトタイピング、複雑なパーツの小規模な製造トライアル、カスタマイズされたパーツまたは新しいデザインの作成、および従来のLSRが使用されてきた用途以外にも最適。硬さ、伸び、モジュラス、引張強さ、圧縮永久歪、耐熱性、水浸漬性など射出成形コンポーネントに匹敵する特性を実現できる。同LSRはECCOの3Dカスタマイズしたシューズのミッドソールに採用、優れた弾性と汎発性(足の動き、クッション性や足の安定性を最適化)、高い寸法安定性、耐久性、幅広い温度範囲での使用などを実現している。

LAMを用いて3D造形が可能な液状シリコーンゴム
LAMを用いて3D造形が可能な液状シリコーンゴム


 ホッティーポリマーは、汎用のFDM(熱溶解積層)方式3Dプリンターで使用できる軟質フィラメント「HPフィラメント® スーパーフレキシブルタイプ」を展示した。同社独自配合により作成された軟質フィラメントで、軟質ながらフィラメント化の時点では硬質フィラメントのように剛性が高く芯があり、縦方向には伸びないためFDM方式の3Dプリンターのフィラメントとして最適。同フィラメントを用いることで柔軟性と精度の高い成形物の安定した造形が、機種に依存することなく、現在市場にあるFDM機構を用いた一般的な3Dプリンターで可能となる。専用のフィラメント供給用スベアップチューブを使用することで、より安定した造形が行えるほか、設定によりサポート材等としても使用可能。着色もできる。同フィラメント専用3Dプリンターも開発中で近日発売を予定しているという。

FDM方式3Dプリンターで使用できる軟質フィラメント
FDM方式3Dプリンターで使用できる軟質フィラメント