やわらか3D共創コンソーシアム(会長:古川英光 山形大学教授)は「2019国際ロボット展」の会期中の12月19日、東京都江東区の東京ビックサイト会議棟で、「第1回ロボット部会」を開催した。
当日は、古川会長が「ロボット業界ではこれまで素性・性能が分かっている金属材料をベースにロボットを作ってきたが、食品のハンドリングなどに見られるようにソフトマターなど新しい材料に注目し始めている。こうしたトレンドは、やわらかい材料と3Dプリンティングなど新しい製法によって新たなソリューションを提供する我々にとってビジネスチャンスと言える。このロボット部会はまた、材料・製法のユーザーであるロボット業界との橋渡しをする大事な役割を担うものである」と挨拶した。
続いて、以下のとおり講演がなされた。
「アニボット vs. ソフトマターロボット―やわらか空間の主導権―」小川 純氏(山形大学)…仮想空間で自律的な振る舞いを見せる物理エージェントであるアニボットは内部状態を計算するための手段である「知能」を持ち、物理エージェントであるソフトマターロボットは外部環境に作用するための手段である「身体」を持つ。本講演では、アニボットと、小川氏が作り上げた「やわらかロボ!ゲルハチ公」を紹介し、情報工学の視点から、支配される空間の異なるアニボットとソフトマターロボットの両者をやわらかく融合する術について議論。やわらかいからできる環境適合というものがあり、ソフトマターロボットが自律的・生命的なアルゴリズム(ALIFE)を獲得するには、人へのアクセス権が重要とした。
「巨大生物の“やわらかさ”」郡司芽久氏(国立科学博物館)…解剖学・形態学を専門として生物の身体構造と機能について研究を進める同氏より、身長5m、体重1500kgの体を持つキリンなどの巨大いな生物たちが、骨格系の「かたい骨組み」で体を支えると同時に、「やわらか材料」や「やわらか機構」をうまく利用することで周囲の環境になじんだ適応的な振る舞いをすることなどが紹介された。本講演では、同氏がこれまでに観察してきた巨大生物の体に内在するソフトマターおよびソフトメカニズムを紹介するとともに、解剖学の視座から紐解かれる生物の優れた機構設計と、生物の優れた機構のソフトロボットへの応用の可能性などについて説明した。
「ソフトロボット機構要素の考案・具現化の実際―やわらかい機構の学術的位置づけとその展開に関する一考察―」多田隈建二郎氏(東北大学)…全方向移動・駆動機構、柔剛切替グリッパ機構をはじめとする多くの新規ソフトロボット機構の考案・具現化に取り組んできた同氏より、そうした新規ソフトロボット機構の事例紹介を皮切りに、ソフトロボット機構の研究を①一つの主駆動体、②複数の被駆動体、③その被駆動体の状態(柔剛)を切り替える「Middle Effector」の組み合わせによる「究極の劣駆動系の設計方法論」としてとらえる新概念について説明した。その概念の先にある駆動機構としては、劣駆動系とセンサーを必要としない反射型駆動系の組み合わせが、原発で働くロボットなどとして有用とした。