第4回ナノセルロース展が開催

2019年12月10日(火曜日)

 第4回ナノセルロース展(Nanocellulose Exhibition 2019)が12月5日~7日、東京都江東区の東京ビッグサイトで、環境とエネルギーの未来展「エコプロ2019」のテーマゾーン・企画として開催された。

ナノセルロース展全景
ナノセルロース展のようす

 

 環境省は、京都大学が代表事業者(プロジェクトリーダー:臼杵有光・京都大学特任教授)となり、計22の大学や研究機関、企業で構成されるコンソーシアムにより、CNFを活用し、CO2削減に向けて2020年に自動車で10%程度の軽量化を目標とする「NCV(Nano Cellulose Vehicle)プロジェクト」の4年間の取組みの集大成として、CNFをできる限り使用して製作した「NCVコンセプトカー」を展示した。部材としてはボンネット(CNF100%材)、ドアトリム・ドアアウター(ともに、ポリプロピレン(PP)-CNF材)、バックドアガラス(ポリカーボネート(PC)-CNF材)、リアスポイラー(PP-CNF材)、ホイールフィンなどに軽量・高強度のCNF材や透明なCNF材を適用し、それぞれ10%以上の軽量化を達成。車としても標準体格の規格よりも10%以上の軽量化を達成している。

環境省「NCVコンセプトカー」
環境省「NCVコンセプトカー」

 

 王子ホールディングスは、CNFによるポリカーボネート樹脂の高機能化技術を紹介した。今回は、トヨタ自動車東日本が、同樹脂に王子ホールディングスの高透明度の完全CNFを15wt%配合して射出圧縮成形(IPM)した「CNF補強樹脂ガラス」を展示。PC樹脂の透明性を維持したまま、もともとのPC樹脂に対し曲げ弾性率で4.5~4.8GPaと2.5倍程度に向上でき、熱線膨張係数は半分に抑えることができる。また、無機ガラスに対して50%の軽量化を、樹脂ガラスに対して20%以上の軽量化を達成できる。つまり、CNF補強樹脂ガラスでは、現行の樹脂ガラスを約2割薄肉化でき、現行樹脂ガラスが厚さ5mmだとすると、CNF補強樹脂ガラスでは厚さを1mm薄くできることになる。

王子ホールディングス「CNFによるポリカーボネート樹脂の高機能化技術」
王子ホールディングス「CNFによるポリカーボネート樹脂の高機能化技術」

 

 第一工業製薬は、TEMPO触媒酸化に関する研究成果とCMCの製造販売を背景にしたセルロース応用技術を活用することで開発したTEMPO酸化CNF(TOCNF)からなる増粘剤「レオクリスタ」を紹介した。同増粘剤がインクへの添加剤として採用され、従来のゲルインクボールペンよりも筆記時のインク粘度を約50%低減することに成功した三菱鉛筆の「ユニボール シグノ」を展示した。また、レオクリスタの高い保水性力を活用しセラミックス成形体(清水焼)の乾燥収縮率を抑制、離形性向上で製品歩留まりを高めた事例を紹介した。さらにCNFのリチウムイオン電池電極用材料への応用として、カーボン系導電助剤の水中分散が容易になるほか、低撹拌力でも短時間で均一分散が可能といったメリットを提示した。

第一工業製薬「レオクリスタの清水焼への応用例」
第一工業製薬「レオクリスタの清水焼への応用例」

 

 大王製紙は、CNF分散液の製造技術として、製造コストの低減を目的に同社三島工場に設置したパイロットプラントで開発した省エネルギー型CNF製造プロセスを採用しており、用途に応じて解繊度の異なる様々な繊維サイズを選択できることや、用途に応じて水分散液「ELLEX-S」、乾燥体「ELLEX-P」、成形体「ELLEX-M」、高透明度CNF「ELLEX-☆」、セルロース複合樹脂ペレットの5種類の形態が選択できることをアピール。今回は、CNF高配合の成形体「ELLEX-M」をボンネット、後部座席ドア、採用し軽量化・高耐久化して米国レース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」に参戦したエクストリームパワースポーツチームSAMURAI SPEEDの電気自動車(EV)を展示。同EVが同レースにおいてショートコース出走車ではクラス11台中1位となり、同CNF成形体の軽量化と耐久性の効果を実証できたことをアピールした。

大王製紙「ELLEX-M」を実装したレース用EV
大王製紙「ELLEX-M」を実装したレース用EV

 

 日本製鋼所は、各種樹脂・エラストマーの造粒・コンパウンド分野において高混練化・高付加価値、省エネ化・環境問題対応などで多くの実績を持つ二軸押出機「TEXシリーズ」を紹介した。セルロースナノファイバーとのコンパウンドにおいても、これまで培った独自技術やノウハウをもとに同二軸押出機を用いて各種ソリューションを提供できることをアピールした。

日本製鋼所「TEXシリーズ」
日本製鋼所「TEXシリーズ」

 

 日本製紙は、同社のTEMPO酸化CNF「セレンピア®」を採用し、ゴムへのコンパウンディングには三菱ケミカルのカーボンブラックマスターバッチの製造技術を活用することにより高次元でCNFが分散したゴム材料を開発・適用した、住友ゴム工業のDUNLOPフラッグシップ低燃費タイヤ「エナセーブ NEXTⅢ」を展示した。セルロースナノファイバー(CNF)を採用した世界初のタイヤとなる。CNFをタイヤの周方向(回転方向)に配列することで、周方向には硬く強い性質でありながら、径方向における柔らかさを兼ね備えた。同時に原材料の側面で、環境性能を高めている。

日本製紙 CNFを世界で初めて採用した住友ゴム工業の「エナセーブ NEXTⅢ」

 

 服部商店は、水を用いずに可塑剤や希釈剤などのオイルの中で、パルプを直接解繊したCNF分散材「セナフ」を展示。油性の樹脂、塗料、接着剤などに容易に分散し、強度アップ、粘度アップなどの特性を付与できる。セルロース同士の凝集を抑制し、基油中の分散性を向上させられるため増ちょう剤として利用できることから、CNFを増ちょう剤としたベアリンググリースをNTNと共同開発していることを紹介した。

服部商店 CNF分散材「セナフ」とベアリンググリース増ちょう剤への適用例
服部商店 CNF分散材「セナフ」とベアリンググリース増ちょう剤への適用例

 

 今回はまた、ナノセルロースの特徴や形態、様々な分野、製品での採用事例などを紹介する「イントロダクションブース」が設けられ、化粧品(コーヨー化成、RBP)やランニングシューズ(アシックス・星光PMC)、スピーカー・ヘッドフォン(オンキョー)、卓球ラケット(ダーカー・中越パルプ工業)などCNFが採用された製品が披露された。

イントロダクションブースのようす
イントロダクションブースのようす