やわらか3D共創コンソーシアム(会長:古川英光 山形大学教授)は4月2日、同コンソーシアム設立3周年の記念シンポジウムをオンライン開催した。山形大学を中心とする同コンソーシアムでは、産学官の多様な関係者とともに、3Dプリンティング、デジタルファブリケーションなどこれからのものづくりを共創し、新産業・革新的事業の創出、新たな人材育成などを目指している。
当日は、山形大学産学連携准教授で元NHKキャスターの臼井昭子氏を司会に、古川会長による開会挨拶、日立製作所研究開発グループ技師長で日本機械学会前会長の佐々木直哉氏と筑波大学生命環境系特命教授でムーンショット型農林水産研究開発事業プロジェクトマネージャーの中嶋光敏氏による来賓挨拶に続いて、以下のとおり講演がなされた。
・会長講演:古川英光氏(やわらか3D共創コンソーシアム会長)…水道の蛇口をひねると水が出てくるかのごとくユーザーの手元にゲルを提供する、ゲルのデジタルパイプラインづくりのプログラム「GelPiper(ゲルバイパー)」の概念と、食品ピックアップ用ロボットの練習用食品サンプルなどGelPiperの活用事例を紹介した。GelPiperプログラムによる共創プラットフォーム構築を呼びかけた。GelPiperプログラムの成功には、ユーザーの主体的な参加と、利用の拡大による共創が必須であり、GelPiperのようなプラットフォームの研究開発を進めていく上では、技術者のメリットを高めることよりも、ユーザーのワクワク感を実現することの方に価値を置くことで、初めてユーザーの利用拡大が進むとの考えから、やわらか3D共創コンソーシアムとして打ち立てた「やわらか3D」に関する考え方「やわらか3D宣言」と「やわらか3D研究原則」の内容を説明した。
・活動構想:小川 純氏(やわらか3D共創コンソーシアム・技術リーダー/山形大学有機材料システムフロンティアセンター 准教授)…やわらか3D共創コンソーシアムロボット部会のビジョンとしてアカデミア×企業の研究開発・技術・材料をつないで具体的な形を持つやわらかい機能構造物(アニマロイド)を生み出す場であり、参入ハードルの低い「やわらかアニマロイド研究開発プラットフォーム」を目指す、とした。やわらかアニマロイド研究開発プラットフォームにおけるソフトマター材料開発、ソフトマターの駆動システム設計、ソフトマターからのセンシング・機械学習、ソフトマターの表現系、アニマロイド技術の感性評価(認知系)、実装(事業化)といった各フェーズについて説明。やわらかアニマロイド研究加速のための投資企業(共創研究)の参加を呼び掛けた。
・基調講演:石川伸一氏(宮城大学食産業学群教授)…フードテックの発展には、分子調理学(化学)と分子調理法(技術)を分けて考え、調理における科学と技術を融合させることが必要と述べた。食のテクノロジーの予測は時間軸からある程度予測できるものの、その技術が社会に受け入れられるかどうかの予測は難しく、食の分野は特に、人の心理、思想、文化、価値観の影響が大きい、とした。フードテックが向かう先の一つに「ハイパー・パーソナライゼーション」があるとして料理の3D印刷についても紹介、3D化には食材や成分の立体的な配置、立体的な構造を知ることが必須とした。
その後、医療部会、食品部会、モビリティ・ゲル部会からの部会活動報告、Harry (Hiroaki) Hasebe氏(Mitsubishi Chemical America Medical Industry Solution Team)による「米国での医療現場における3D Printingの現状と課題」と題する基調講演がなされた後、講演者をはじめとする各分野の識者によるパネルディスカッションが活発に行われた。