3Dプリンティング/AM技術の総合展「TCT Japan 2020」が1月29日~31日、東京都江東区の東京ビッグサイト 南3、4ホールで開催された。
アディティブマニュファクチャリング(AM)技術は、あらゆる産業における製品・技術開発に向けた新たな価値創造・製造プロセスの加速化/最適化を図るために必要不可欠な技術となってきている一方で、3Dプリンターだけでなく材料・評価/分析・加工など、設計から造形、シミュレーションや生産管理をつなげるエコシステムの構築が急務となっている。
こうした背景から本展では、3Dプリンティングを含むAM技術を、周辺技術や産業を包括的に捉えて、国内外への発信とビジネスマッチングを加速させる場として開催されるもの。ソフトマター関連では、以下の出展があった。
東レは、独自のポリマー設計技術により、粉末床溶融結合造形に最適な流動性やポリマー特性などを持つスーパーエンジニアリングプラスチック、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂の3Dプリンター対応パウダー「トレミル®PPS」を紹介した。
高強度、高剛性、耐疲労性、耐クリープ性を持つほか、長期耐熱性に優れる(UL温度インデックス200~240℃)。また、耐薬品性が極めて良好で、電気特性、寸法安定性、難燃性(難燃剤を配合せずにUL94V-0を達成)に優れる。優れた耐熱水性や耐オイル性などから、金属代替による軽量化やデザインの自由度が求められるインペラなどの機能性試作部品として、優れた難燃性から、金属代替による軽量化が求められるブラケットなどの実用部品として、優れた耐加水分解性(蒸気・熱水への耐性)から、繰り返しオートクレープ滅菌(ガンマ線、電子線)に対する耐久性が求められる滅菌器具の実用部品としての適用が想定される。
BASFジャパン(日本正規代理店:日本3Dプリンター)は、熱溶解積層方式(FFF)の3Dプリンター向けに、出力の容易さや寸法安定性、耐久性、柔軟性など様々な材料特性を低コストに実現できる3Dプリンター用フィラメント「Ultrafuse®シリーズ」を紹介した。
15%のカーボンファイバーを含んだポリアミド(PA)ベースの「Ultrafuse® PAHT CF15」は耐熱性、耐薬品性、機械的回復力、寸法安定性に優れ、熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)ベースの「Ultrafuse® TPU 85A」は、耐摩耗性、低温柔軟性、減衰特性に優れ、高い引張強度と優れた耐引裂け伝播性を有する。共重合ポリアミド6/66ベースの「Ultrafuse® PA」は耐疲労性に優れ、高い機械的強度と良好な耐摩耗性/潤滑性、低温環境下での良好な耐衝撃性を持つ。ガラス繊維30%配合ポリプロピレン(PP)ベースの「Ultrafuse® PP GF30」は、優れた耐薬品性や低密度、低吸湿性、高耐熱性、紫外線耐性に優れる。
ブルカージャパン X線事業部は、物体内を透過するX線の透過力を用いて内部構造を非破壊に観察できる3D X線顕微鏡(3D XRM)「SKYSCAN 1273」を紹介した。
サンプルの配置→スキャン→再構成→解析までわずか4ステップのワークフロー(約15秒)でアーチファクトのない高品質画像を取得できる。卓上型ながらワーキングスペースが広く、最大300mm径、500mm長のXLサンプルにも対応。豊富なアクセサリー・機能によって高アスペクト比を含むあらゆる形状・サイズのサンプルの内部構造イメージングを実現している。今回の展示では、3Dプリンターで作製した金属パーツをピクセル分解能34μmでスキャンし3D観察、オリジナルの3D設計データと比較することで、加工工程で生じる欠陥やボイドの評価といった品質管理にも利用できることを示した。
山形大学やわらかものづくり革命コンソーシアムは、ソフト3D界面の機能(やわらかさ・柔軟性・変形性と瀬着・導電・絶縁・光電変換・ガスバリア等)を高度に融合させた、ソフト3Dマテリアル創製と、次世代プロセス革新の学問的挑戦を産学共同で行うことで、ニーズに対応した少量多品種のデバイス、または製品化が身近にできる「コンビニエンスファクトリー」を構築し、その先のやわらかものづくり革命への展開を提案した。
3Dゲルプリンティング×仮想熟練者の「ブレインモデル」によって、ゲル材料の3D造形上の不具合(歪み、未ゲル化など)をデータベースとして蓄積、一部の研究者が共有するノウハウを仮想熟練者の思考としてネットワーク可視化できる。また、3Dゲルプリンティング×熟練者AIによって、ブレインモデルから不具合の原因を学理に基づき導出、不具合を取り除くための造形方法を伝達するなど、プロセスの最適化と学理追求につながることなどをアピールした。