やわらか3D共創コンソーシアム(https://soft3d-c.jp/、会長:古川英光・山形大学教授)は7月5日、6日に、山形大学米沢キャンパスと米沢オフィス・アルカディア、山形県かみのやま温泉月岡ホテルで「第1回合同部会~15年後の3Dプリンティングビジネスを共創しよう~」を開催、約40名が参加した。
同コンソーシアムは3Dプリンターを使って新産業や革新的技術の創出を目的に、本年4月に設立された連携組織。ゲル材料の3Dプリンティングで世界を先導する古川英光会長のもと、多様な材料と多様なプリンターの組み合わせによって新産業の創出や、ものづくり産業の活性化が期待されており、アイデアづくりとそれを実際に形にするための場として、研究機関だけでなく世界の最新技術を持った企業や団体、山形県地元企業なども集まるプラットフォームとなることを目指している。
今回の合同部会は設立から初めての開催となるため、①コンソーシアムの仲間のことをよく知る、②コンソーシアム、部会の位置づけ・機能を共有する、③3D プリンティング、デジタルファブリケーションの最新の技術動向を共有する、④共創を体感して今後の活動ビジョンの種を描く、⑤山形大学保有の3Dプリンタの情報を共有する、ことをコンセプトとして設定。会員同士や技術について相互理解を深めることで、スタートラインを揃えていくことを主に据えた。
1日目はインプットを主とし2日目はアウトプットを主とする2日間の一連のプログラムを通じて、参加者がコンセプトを体感してもらう構成とした。
1日目にはまず古川会長より、食品、医療(接着)、ゲル(ゴム、エラストマー)、モビリティ(金属・複合材料)、ロボットの分野でそれぞれ設けられた、3D食品部会、次世代メディカル部会、3Dゲル部会、3D金属高分子複合部会、ソフトマターロボティクス部会の五つの部会の位置づけとしては、コンソーシアムにおいて新規知見の学びやアイデア構築、未来予測と気づきといったオープンイノベーション/共創の「場」であるとの説明があった。部会の役割としては、部会(分野)ごとには川下から川上までの垂直連携による出口を見据えた包括的テーマや同業他社との水平連携による非競争領域に関する根幹テーマに取り組み、各部会(各分野)間の連携では、各部会(各分野)の特徴を活かしたコンソーシアム活動の牽引や各部会(各分野)の成果をコンソーシアム全体で共有すべきとした。また、コンソーシアム活動に関して、10年以内に世界に伍する国際研究開発拠点となるというスケジュール感を示した。さらに、他社との共同研究によって企業のイノベーション力を上昇させるとともに、開かれたネットワークで多様な相手と共同研究をすることでより効果を高める、という部会活動で目指す状態について述べた。オープンイノベーションの成功要因としては、戦略・ビジョンとして自社のケーパビリティを超えた目標設定、外部ネットワークの構築、トップ層の理解・コミットメントやミドル層のコーディネータ人材としての機能、現場におけるイノベーター人材、成功体験の付与、などを掲げた。
1日目にはまた、会員の相互理解を深めるための自社紹介や、米沢キャンパスにある3Dプリンター見学会が行われ、最新技術動向に関する講演が以下の講師により行われた。
・中山 功一氏(佐賀大学 医学部 臓器再生医工学講座 教授/サイフューズ技術顧問)
・榊 良祐氏(電通 第3CR プランニング局 デザインストラテジスト/アートディレクター)
・小西 健彦氏(ファソテック インキュベーション推進部 3Dプリンタ担当)
・川上 勝氏(山形大学 工学部 機械システム工学科 古川研究室・准教授)
2日目は、月岡ホテルにおいて、共創の体験や相互理解の深化、今後の協働の種づくりなどを目的とし、「ゲル材料、デジタルファブリケーション、3D プリンティングを用いて、15 年後の中国or米国で展開できる(個人向け、法人向け)ビジネスを共創する」をテーマにして、ワークショップが開催された。「15年後」はケーパビリティを超えた目標設定として、「中国or米国」は見込まれる人口増(市場、労働力)としてテーマに据えられた。ワークショップではまず、各グループ(各円卓)が議論しつつワークシートを作成。ワークシートには、テーマ、キーワード、誰に、何を、どうやって、課題、提供価値、部会での共創、の項目があり、各グループには、机上の検討に留めるだけでなく自社がどう絡んだら面白いか、次の協働展開に進めるかを発想するよう、求められた。ワークシートが作成された後、それぞれ口頭での説明がなされた。続いて、「1000万円の予算があったらどのスタートアップ案に投資したいか」との観点で他の卓の発表を評価して投票、1卓1票として得票数の多い順に順位付けする「第1回合同部会 成果選抜総選挙」が行われた。最後に、今回のグループワークを振り返って、①共創した案がどんなものだったか、②描いた案をヒントにして自社でどんなことに取り組みたいか、③その実現のために何が課題となるか、④その課題解決のためにコンソーシアムで具体的に何をやりたいか、といった個人ワークが行われ、グループ内で個人ワークの結果が共有された。
ワークショップ終了後は、米沢オフィス・アルカディアにある3Dプリンターの見学会が行われた。