王子ホールディングス、CNFによるポリカーボネート樹脂の高機能化技術を開発

2018年05月02日(水曜日)

 王子ホールディングスはポリカーボネート樹脂とセルロースナノファイバー(CNF)を組み合わせることにより、従来よりもはるかに高い特性(高弾性率や低線熱膨張係数)を持つ複合材の開発に成功した。

 ポリカーボネート樹脂は軽量で優れた透明性と耐衝撃性を持つことから自動車用ライトカバーや電子デバイスの筐体、レンズ剤などに用いられているが、外部からの力に影響されやすく(弾性率が低く応力付与時にたわみやすい)熱によって変形しやすい(線熱膨張係数が高い)ことから、ガラスのような安定した形状や寸法が厳しく求められる用途への使用は限られていた。

 これに対し同社では、光の波長よりも小さい線維径3~4nmという高透明度の完全CNFを組み合わせることによって、ポリカーボネート樹脂の優れた透明性を維持したまま、弾性率を従来のポリカーボネート樹脂の約4倍(最大で9GPa)まで向上させ、かつ線熱膨張係数を従来のポリカーボネート樹脂の約1/3(25ppm/℃、アルミニウム並み)まで低減させることが可能となった。

 これにより、従来では難しかったガラスからポリカーボネート樹脂への代替拡大や、新規用途への展開が期待でき、軽量化や断熱性向上といったガラスにはない効果も見込まれる。同社では今後、成型メーカーと協議を進め、数年以内の実用化を目指して用途開発を進めていく考えだ。

写真左:ポリカーボネート樹脂 写真右:CNFとポリカーボネート樹脂の複合材
写真左:ポリカーボネート樹脂 写真右:CNFとポリカーボネート樹脂の複合材