やわらか3D共創コンソーシアム設立、キックオフシンポジウムが開催

2018年04月16日(月曜日)

 山形大学は3Dプリンターを使って新産業や革新的技術の創出を目指した連携組織「やわらか3D共創コンソーシアム」( https://soft3d-c.jp/ )を4月6日に設立した。ゲル材料の3Dプリンティングで世界を先導する山形大学・古川英光教授が会長に就任。多様な材料と多様なプリンターの組合わせによって新産業の創出や、ものづくり産業の活性化が期待されている。

古川会長と、背景のコンソーシアムのロゴをデザインしたマンジョット・ベディ氏(just on time社)

 同コンソーシアムでは、アイデアづくりとそれを実際に形にするための場として、研究機関だけでなく世界の最新技術を持った企業や団体、山形県地元企業なども集まるプラットフォームとなることを目指す。

 設立に合わせ4月6日に東京都港区のキャンパス・イノベーションセンター東京で「やわらか3D共創コンソーシアム キックオフシンポジウム」が開催、小山清人・山形大学学長のビデオレターによる開会挨拶と内閣府政策企画調査官の千嶋博氏による来賓あいさつに続いて、以下のとおり開催された。

・講演「3Dプリンティングが起こす生産革命と本コンソーシアムの戦略」古川英光氏…ソフト材料の3Dプリンティングで描く共創の事例として、3Dゲルプリンターを用いた高強度ゲルの三次元造形技術による柔らかいロボットハンドの創成や、食べ物の味や食感をデータ化し遠隔地でゲルキューブとして再現する「SUSHIテレポーテーション」など、ロボット、ゲルや食品、さらには医療、モビリティなど幅広い分野でのものづくりの可能性を紹介した。コンソーシアムの目指す像として、「材料30年を材料3ヵ月」にする新材料ラピッドプロトタイピングによるモデル開発を掲げた。「日本発のオリジナルの3Dプリンターと日本の誇る新技術を用いて、創造性と技術、研究を結び付けた新しいイノベーションを起こすべく、First Penguinになってほしい」と呼びかけた。

・講演「SIP革新的設計生産技術からの期待」佐々木直哉氏(内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的設計生産技術担当 プログラムディレクター)…戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的設計生産技術では、社会の多様なニーズに応じた高付加価値製品の創生による産業競争力の強化、地方創生に向けて、①従来にない材料の3D造形、機能性付加といった革新的生産・製造技術を中心に推進し産業界に展開、②地方の中小企業が革新的生産・製造技術に触れたり活用したりできる場を構築、③SIP終了後も継続して成果を活用できる仕組みを構築する取組みを実施していることを説明。コンソーシアムに対しては、デザイナブルゲルの実用化を継続してリードしていく役割を期待。「さらに幅広い企業にゲルの魅力を知ってもらい、これまで想定しなかった使い方を通じ、従来にない価値を持つデライトな製品や部材が創出され、ゲルを起点として山形地域の地方創生につながることを期待する」と締めくくった。

佐々木氏

 

 講演終了後は、、古川会長をファシリテーターとして、鈴木庸久氏(秋田県立大学 教授)・山崎 聡氏(三井化学 コーティング・機能材事業部 部長/九州大学 先導物質化学研究所 客員教授)・田中浩也氏(慶應義塾大学SFC 研究所 所長/環境情報学部 教授)・中谷光男氏(パナソニック エコソリューションズ社 技術本部イノベーションセンター 主幹)・川上 勝氏(山形大学大学院理工学研究科機械システム工学専攻 プロジェクト准教授)をパネリストに、パネルディスカッションが開催。

 「日本の3Dの技術はすでに世界で充分に勝てるレベルにある。人間に頼りすぎない、データを活用・融合したものづくりを進めてほしい」(中谷氏)、「日本は材料、機械、ソフトウェアと個々の技術は優れているが融合できていない感がある。3Dプリンターをキーにこれらを融合させた、日本らしい役に立つ製品技術を発信してほしい」(山崎氏)などの提案がなされた。

中谷氏

 

山崎氏

 

田中氏