日本製紙、CNF強化樹脂の実証生産を本格化

2021年10月19日(火曜日)

 日本製紙は、富士工場(静岡県富士市)内のセルロースナノファイバー強化樹脂(CNF強化樹脂)実証生産設備を7月末日に拡張した。サンプル製造能力を拡大し、用途開発を加速していく。同社のCNF強化樹脂「Cellenpia PlasTM(セレンピア プラスTM)」は、CNFをポリプロピレン(PP)やポリアミド(PA)6などの樹脂へ混練・分散することにより製造される高強度な新素材で、自動車、建材、家電などでの利用が期待されている。CNF強化樹脂は、部材の軽量化が図れることに加えて、マテリアルリサイクル性に優れるため、プラスチック使用量の削減やCO2を主とした温暖化ガス排出削減につながる。

 

日本製紙 CNF強化樹脂混練設備 ソフトマター メカニカル・テック社
CNF強化樹脂混練設備

 

 同社は、現在、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業プロジェクト「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発/革新的CNF製造プロセス技術開発/CNF強化樹脂(PA6、PP)の低コスト製造プロセス技術の開発)」に宇部興産とともに参画し、CNF強化樹脂の開発に取り組んでいる。今回、この助成金を活用して富士工場に建設した混練を中心とする実証拡張設備は、年間50t以上のCNF強化樹脂マスターバッチ(CNFを高含有(30~50%)した樹脂。5~10%程度に希釈した後に、成形加工する)を製造できる。

 また、このCNF強化樹脂の設計・開発、製造について新たにISO9001の認証を取得した。それにより、マスターバッチの品質マネジメントを徹底させていく。今後は安定して大量生産する製造技術の確立を目指すとともに、CNF強化PA6については本年10月から、またCNF強化PPについては2022年4月からサンプル提供を拡大し、自動車用部品をはじめとする幅広い産業への用途開発を加速させていく。

 同社ではすでに石巻工場(宮城県石巻市)でTEMPO酸化CNF(セルロース(原料パルプ)をTEMPO触媒によって酸化し、軽微な解繊によって製造したCNF。繊維幅約3nmの非常に細いCNF)を産業用途全般向けに、江津工場(島根県江津市)でカルボキシメチル化CNF(CM化CNF:セルロースをカルボキシメチル化(CM化)し、軽微な解繊によって製造したCNF。繊維幅数nm~数十nmのCNF)を食品、化粧品用途向けに営業生産・販売している。

 同社ではこれに加えて、「CNF強化樹脂」の大量製造技術と本格的な供給体制を早期に確立することで、「木とともに未来を拓く総合バイオマス企業」として、新素材・CNFの市場創出の強化と、減プラスチック社会の構築や地球温暖化対策(CO2を主とした温暖化ガス排出削減)に貢献していく考えだ。 

 

日本製紙 CNF強化樹脂(Cellenpia Plas )マスターバッチペレット ソフトマター メカニカル・テック社
CNF強化樹脂(Cellenpia Plas )マスターバッチペレット

  

 

日本製紙 CNF強化樹脂ペレット中のCNF繊維 ソフトマター メカニカル・テック社
CNF強化樹脂ペレット中のCNF繊維