イグス、国際ロボット展 特別メディア会議を開催

2020年01月10日(金曜日)

 イグスは、2019年12月18日~21日に東京ビッグサイトで開催された「2019国際ロボット展」に合わせて「特別メディア会議」を開催した。当日は北川邦彦社長が、同年9月16日~21日にハノーバーで開催された「EMO Hannover」と同年10月7日~10日にドイツ・シュトゥットガルトで開催された「Motek」で披露された秋の新商品を紹介しつつ、今後の日本でのフォーカス商品について説明した。

秋の新商品について実演をまじえて説明する北川社長
秋の新商品について実演をまじえて説明する北川社長

 

■クリーンルーム対応の省スペースケーブル保護管「eスキン」

 従来のケーブル保護管「エナジーチェーン」を設置できないようなスペースにおいて、「eスキンフラット」は、やわらかい素材の上部シェルおよび下部シェルからなるコルゲート構造を採用した保護管によって高さ200mmに納まる高屈曲(曲げ半径を制御)を実現。

 ファスナー開閉式機構のため、中のケーブルが破損した際に他社製品では全交換する必要があったが、本品では破損したケーブルだけを交換することが可能。従来固定だった長さも、巻きの状態で購入することで、希望の長さに調整できる。コンタミの発生を抑える特殊な樹脂を使用することでIPAクラス1のクリーンルーム仕様となっている。

 また、個々のeスキンの各チャンバーにケーブルを1本ずつ収納することで、さらに小さい設置スペースに収まる「eスキンフラット」は、同様に長さの調整が容易で、ケーブルが破損した場合、ジッパー構造のため、そのチャンバーのみを開いてケーブル交換が行える。IPAクラス1のクリーンルーム仕様。

「eスキンソフト」(上)と「eスキンフラット」(下)
「eスキンソフト」(上)と「eスキンフラット」(下)

 

■工具不要で開閉できる頑丈なケーブル保護管「エナジーチェーンE4Q」

 自動車製造など大きな損害をもたらす突発的なライン停止を防止する目的から、イグスの20億サイクル/年の試験評価に基づき長寿命化を確保した可動ケーブル「チェーンフレックス」と、ケーブルを保護しつつ自身の高耐久性も備えるケーブル保護管が用いられている。エナジーチェーン内では、収納したケーブル同士が干渉しあうことによる損傷を防ぐため、横・縦の細かい仕切りを備えた新しい内部仕切りパーツ(セパレーター)により、ケーブルを整列させている。

 「EQ4」では、革新的なクロスバー機構によって、スナップを起こして両側のロックを解除するだけで、工具を用いることなく手で開閉できる。メンテナンスを容易にし、組立て時間を80%短縮できる。工作機械業界からのコストダウン要求に対して、トータルコストダウンの手法として提案。自動車ラインでの実施例では、従来品で2.5日間を要していた交換時間が4時間に短縮されている。

エナジーチェーンE4Q(左):工具が必要な従来品(右)に対し、指でスナップを起こすだけでサイドレールとの嵌合が外れ容易に開閉でき、縦・横のセパレータも簡単に取り外せる
エナジーチェーンE4Q(左):工具が必要な従来品(右)に対し、指でスナップを起こすだけでサイドレールとの嵌合が外れ容易に開閉でき、縦・横のセパレータも簡単に取り外せる


■低コストロボット「ロボリンクDP」

 中国、韓国、日本向けの新タイプで、ステッピングモータ、制御ユニット、ティーチングソフト付きで提供される4軸および5軸の低コストロボット。関節部には薄型・軽量のロータリーテーブルベアリング「イグリデュールPRT」の歯付き外輪タイプを使用することで軽量、メンテナンスフリーを実現している。AGV(無人搬送車)に取り付けて物の受け渡しを行う用途などで、無潤滑で滑らかな動きを実現するとともに、軽量化によってAGVの省電力化にも貢献する。

制御ユニット、ティーチングソフト付きで提供されるロボリンクDP
制御ユニット、ティーチングソフト付きで提供されるロボリンクDP

 

■薄型・軽量のロータリーテーブルベアリン「イグリデュールPRT-04」

 ロータリーテーブルベアリングはポリマー製すべり軸受用材料で実績のある「イグリデュールJ」を摺動材として採用、メンテナンスフリーで無潤滑で使用できる。新製品は、耐摩耗、無潤滑でメンテナンスフリーといった特徴はそのままに、従来製品に比べ60%軽量化しつつ高さを50%に抑えた。コスト効率と省スペース化を実現している。上述のとおり歯付きタイプはロボットの関節部などに適用できる
 

イグリデュールPRTを用いたロボット関節部アッセンブリーの例
イグリデュールPRTを用いたロボット関節部アッセンブリーの例

 

■IoTにより計画保全を実現するスマートプラスチック

 摩耗センサーや加速度センサー、温度センサーなど様々なセンサーと監視モジュールで構成された「isense(アイセンス)」を搭載した、リニアガイドやエナジーチェーンなどのスマートプラスチック製品によってセンシングされたデータが、予防保全のためのデータを集中管理するコミュニケーションモジュール「icom」に直接伝送される。オンラインシステムの場合、icomに伝送されたデータは、イグスのデータセンターに送信される。これによりイグスデータセンターとの連携によるオプションとして、外部のメンテナンス作業部隊や交換部品を自動的に手配するといった、迅速なオペレーション体制の構築や寿命の最適化が図れる。

 しかし日本の場合は、工場内の情報を外部に出すことを望まないユーザーも少なくない。こうしたニーズに対応して、情報を外部に出さずにクローズドな環境で、ユーザーのデータシステムに対してのみ、通信をするという新しいタイプのスマートプラスチックを、特に日本のユーザー向けに開発。icomの基板を改良するなどしてクローズドシステムを可能にした新しいコミュニケーションモジュール「icom.plus」は、センシングされた予防保全のためのデータを自由に統合。ユーザーの知りたい最適な時期・間隔で製品の寿命・交換時期の情報がユーザーのデータシステムにクローズドで通知される。

 これによって、メンテナンス費用の低減や予期しない設備稼働停止の回避、長寿命化、稼働効率の向上、時間節約、異常原因の迅速な発見など生産性の向上に寄与するとともに、エネルギー消費量の節減などコスト削減や環境保全に貢献できる。

スマートプラスチック:薄型の製品もセンシングを可能にしている
スマートプラスチック:薄型の製品もセンシングを可能にしている