東北大学とメニコン、次世代コンタクトレンズで共創研究所を設置

2024年04月22日(月曜日)

 東北大学とメニコンは本年4月、仙台市青葉区の東北大学青葉山キャンパスに「メニコン×東北大学 みる未来のための共創研究所」(以下、共創研究所)開設する。本共創研究所とNanoTerasuをハブとする産学連携による研究活動を推進し、理想のコンタクトレンズと、環境配慮型コンタクトレンズ流通の構築を実現することで、東北大学とともに、メニコンが目指す「新しい"みる"」を創出する。

メニコン 東北大学 共創研究所 メニコン取締役兼代表執行役会長CEO 田中英成氏(写真左)と東北大学 総長 大野英男氏(写真右) 月刊ソフトマター メカニカル・テック社
メニコン 取締役 兼 代表執行役会長 CEO 田中英成氏(写真左)と
東北大学 総長 大野英男氏(写真右)

 

 コンタクトレンズは、使い捨てレンズの市場構成比率が年々大きくなっており、レンズの製造・流通に使用されるプラスチックの量が格段に増加する社会背景がある。

 その中で東北大学は、2023年1月にグリーン未来創造機構・グリーンクロステック研究センターを開設し、ここを起点にリサイクルプラスチックに関するデータベース構想と、プラスチックに関するサーキュラーエコノミーシステムの構築などのプラスチックリサイクルに関する研究を推進している。

 一方、メニコンは、これまで大型放射光施設やあいちシンクロトロン光センターなどのX線源、大型陽子加速器施設における中性子源といった量子ビーム施設を活用し、コンタクトレンズやその素材を取り巻く"なぜ"に対し、科学の眼による解明を目指してきた。

 またシンガポールのグループ製造会社において、製造時に排出される一部のプラスチック廃材を使用し、製品用ケースへの再利用を図っており、環境省が推進する国家プロジェクトBRIDGEに参加することで、上記リサイクルプラスチックの資源化に関する研究を行ってきた。

 2023年2月には、東北大学内において稼働準備が進む次世代放射光施設NanoTerasu(正式名称「3GeV高輝度放射光施設」)のコアリション(NanoTerasuへの参画にあたり、加入金を負担し施設利用権と学術メンバーから実験やデータ分析などの支援を受けられる仕組み)に加入した。
 
 そこで両者は本年4月1日に「メニコン×東北大学 みる未来のための共創研究所」を開設。コンタクトレンズの素材であるソフトマターの計測に優れた性能が期待されるNanoTerasuを活用し、量子ビームの相補利用による精細な実態計測と、デジタルトランスフォーメーションを活用した計算によるデジタルツイン構築を進め、これを両輪とする精緻な素材設計を目指す。
 
 今回、コンタクトレンズ素材を含むポリマー素材の計測に優れた性能が期待されるNanoTerasuは、特に輝度の高い(明るい)軟X線が使用できることに特徴がある。この軟X線という光を用いることで、コンタクトレンズの大きな課題の一つであるレンズと水の相関、すなわちレンズ装着の快適性に関する深い理解が期待される。

 さらに、これまでの分析による探求だけでなく、量子ビームの相補利用による精細な実態計測を、デジタルトランスフォーメーションを活用した計算科学と融合させることで、計測と計算のデジタルツイン構築を進め、これを両輪とする精緻な素材設計を目指す。

 今回、コアリションへの加入により、多岐にわたる異種分野の融合の実現、本研究所の開設に至っており、さらなる展開が期待されている。
 
 また、ソフトコンタクトレンズの流通に使用されるプラスチック容器は、年間約4万tと試算されるが、この容器に代表されるコンタクトレンズ用プラスチック資材は、そもそも医療機器に使用するため厳しいチェックを受け、純度の高い原料を使用している。

 加えて環境省管轄のBRIDGEにおける研究によって、製造に伴う熱・光・圧力による品質劣化が極めて小さいリサイクルプラスチックであることが確認できている。このことから、これら資材の効率的な資源化は、昨今求められているCO2削減への期待値の高い水平リサイクル資材として期待される。

 BRIDGEを通じたSIPサーキュラーエコノミー課題との連携を図り、コンタクトレンズ製造・流通過程で使用されるプラスチックに関し、水平リサイクル技術の確立を目指す。同時に、市場に流通するコンタクトレンズ容器のサーキュラーエコノミー活動の普及推進を通じ、社会全体での環境配慮型コンタクトレンズ流通の構築を目指す。

 東北大学とメニコンは、共創研究所の設立により、次世代コンタクトレンズ素材の設計および環境配慮型コンタクトレンズ流通の構築が加速するものと期待している。

 共創研究所における研究は、「東北大学・東京大学・メニコン コンタクトレンズの基盤技術構築に関する共同研究」に基づき推進するもの。
 
 共創研究所の概要は以下のとおり。

・名称:「メニコン×東北大学 みる未来のための共創研究所」

・運営体制:
 運営総括責任者:伊藤恵利氏(メニコン メニコンフューチャーデバイスラボラトリー 所長、東北大学 特任教授)
 運営支援責任者:岡部朋永氏(東北大学大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻 教授、グリーン未来創造機構 グリーンクロステック研究センター センター長)

・設置場所:東北大学 青葉山キャンパス ハッチェリースクエア3階

・設置期間:2024年4月1日~2027年3月31日