日本化学会は5月25日に「第73回定時社員総会および第650回理事会」を開催、小林喜光氏(三菱ケミカルホールディングス取締役会長)を新会長に選任、小林氏は同日付で会長に就任した。任期は、本年5月25日から2022年5月に開催を予定している理事会までの2年間。
小林氏は会長就任にあたり、以下のとおりコメントを寄せている。「現在の社会においては、グローバル化、デジタル化(AI 化)、ソーシャル化の三つの大きなうねりの中で,既成概念が覆されるような急激な環境変化が起きている。米国、英国に代表されるポストグローバル化への波、世界的なデジタルプラットフォーマーの台頭、AI や量子技術の急激な進歩など、時代は革命期に突入していると言えるだろう。また、新型コロナウイルス問題が終息した暁には、生活形態や価値観の大きな転換が想定され,あらゆる戦略を大胆に見直すことが必須となる。一方で、我々の目の前には気候変動問題,海洋プラスチック問題、食糧・水問題など世界的規模の解決すべき課題が山積みされている。こうした時代の変化に鋭敏に対応し世界規模の課題への解決策を提供していくことが、化学に最も期待されていることだと考える。化学産業はこれまで、大気や海を汚染するものの代名詞のように扱われてきたが、その反省を活かすことで青く澄んだ海やホタルが生息するきれいな淡水や空気を取り戻すことができた。つまり化学産業は自ら招いた環境破壊に対し、自らの経験と技術を活用してsolution provider としての役割を果たした。化学の力をもってすれば世界規模の課題に対しても必ずや解決策を見出すことができるだろう。①最先端の研究活動を継続的に推進し、新たなイノベーションの種となる化学的発見・技術開発を加速する、②研究成果を実装するために異領域(学問間、産学官、国内外)との連携・融合など(オープンイノベーション)が重要であることを認識し、自らの研究活動を推進する、③次世代を先導していく化学系人材を育成するとともに、日本の研究環境をより魅力的なものへと発展させる、という取組みを実現するためにも環境を整備し、新たなイノベーションを産み出す「場」を提供できるよう本会としての活動を推進していきたい。それら取組みの実現には化学の叡智を結集することも必要であるため、化学系の学協会同士の交流もさらに深化させていきたい」。